アバターを使ったVR実験プログラム

私のゼミの卒論では,最近VRを使った研究が人気なのですが,こんな心理実験もできるんです…という一例として,今年の卒論実験のプログラムをアップしてみました。

アバターを使ったVR実験プログラム

バーチャル・ユーチューバーのように,私たちは自分とは別の身体をあたかも自分であるかのように使って動かすことができます。そのとき,私たちの脳は身体の左右をどのように対応づけているのでしょうか?

私たちのこれまでの研究では,アバターと正面から向き合っているときには,鏡のように自分の右手と相手の左手が対応している方が動かしやすいのに,斜め前からになると,視点がまだ正面側なのに,脳は自動的に右手と右手,左手と左手というように,対応づけを自動的に切り替えることがわかっています。そこで,この実験では,もう少し難しいことをやらせてみたらどうだろうかと,「積み木遊び」をやってもらう実験を行いました(実験をやった結果としては,いろいろ反省点多く,まずはちょっと課題が難しすぎたね~というのが我々の正直な感想でした… ^^;。手の角度を調整する部分がどうも身体の左右といった粗大運動のコントロールとは違うメカニズムで行われているようですね。プログラムももう少しアーティファクトに影響されないように煮詰める必要があった…コロナが恨めしい)。

この実験プログラムでは,キーボードの「M」キー(Mirrorの「M」)で,その場で左右の対応づけを切り替えることができるので,身体性のデモンストレーションプログラムとしても使えます。Oculus(facebook)のVRゴーグルが必要なのですが,大学の実験室に転がっているようだったらぜひお試しください(Oculus Riftなんて,だいたい私のようなもの好きな教授がもっているはずです… ^^;)。

Society 5.0といわれる現代において,私たちは自分の身体を離れて活動できるようになってきました。そんな中で「身体性」に関する研究はいろいろと盛り上がってきています。たとえば,人工知能がどんなに発展したとしても,機械は身体をもたないので,私たちのような身体を使った認知はできません。そういう意味でも,身体性の研究は人間に残されたもっとも人間らしい部分の研究といえるかもしれません。脳梗塞などによる麻痺のリハビリなどの応用面でも今後注目です。

今年うちの院生がやっている研究も,大々的な論文にはしない予定なので,いずれ実験プログラムを公開しようと話しています。コロナ禍で対面での研究発表がなかなかできない中,地方の小さな大学の小さな心理学研究室としての学生の研究紹介です。