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学生の卒論プログラムが書籍に掲載されました

昨年度の吉田ゼミの卒論,「トレイルメイキングテストとモグラたたき課題を用いた注意機能評価」(小谷和泉・若林有菜)で使用した実験課題(モグラたたきゲーム,トレイルメイキングテスト)が,来月朝倉書店から公刊される「手を動かしながら学ぶ 神経心理学」のデジタルコンテンツとして収録されました(帯の画像を見てください!)。

地方私立大学の小さな研究室ではありますが,こうやって学生とやった研究が小さな実を結ぶのはとてもうれしいことです。

ちなみに,この研究は院生(有吉)が引き継いで継続研究中。その成果は来月行われる日本心理学会の大会準備委員会企画シンポジウム「認知リハビリテーションから見る高次脳機能障害の支援の拡大と深化」でも紹介する予定です。

 

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バーチャル花火大会

新型コロナ感染症や警備体制が整わないなどの理由で,広島でもいくつかの花火大会が中止になってしまいました。日本の夏の風物詩なのに,とても残念なことですよね。

そこで,花火を観られるプログラムを作ってみました(プログラムのコーナーに置いています)。

実はこれ,医療的ケアが必要な方のための生活介護事業所で,重度の障がいや難病のために外出が困難な方に楽しんでもらおうと作ったものなのです。下の写真は,昨冬,その施設の職員の方たちを対象にした体験会の様子。

このプログラムは,VRゴーグルがあれば,単に地上で花火を観るだけでなく,下のビデオのように空に舞い上がって,花火の中を飛び回ることができます (^^)…夢あると思いませんか?

コロナ禍もまだ予断を許さない状況ではありますが,ゼミ生にもワクチン接種を済ませる学生も増えてきましたし,またいろんなご施設で活動ができればいいなと思っています。

 

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枝豆祭

大学の北に戸坂(へさか)くるめ木という町があって,先週末は学科の2年生を中心に声をかけて,その町内会の「枝豆祭」のお手伝いをしてきました。

毎年,公園に屋台を並べて賑やかに行われている枝豆祭だそうですが,新型コロナ感染症のために昨年は全面的に中止。今年も中止するしかないか…という状況でしたが,地域の絆の維持形成にも重要な役割をもつイベントなので,子どもたちへの枝豆配布会だけでもやりたいとのこと。
感染対策についても真剣に検討していただいた上での地域活動なので,じゃあ,うちからも若いのを出しましょうかということで,万が一の際の責任はよしだが取るわと,私も一緒に参加させていただきました。

集合した後,午前中は町内会のみなさまと一緒に畑仕事…。

試食のために豆を枝から切り離してます。

洗って塩もみして茹でる。学生たちには何もかもが初めてとのことですが,地域の皆様が本当に親切に学生たちに教えてくれます。感謝!


採れたての枝豆がこんなにおいしいものとは知りませんでした (^^)。

午後は町内の子どもたちに枝豆の配布会。若い学生たちが相手をすると子どもたちもとても喜んでくれます。

…というわけで,久々の地域活動を体験しながら,学生たちとは,どのようにすれば都市部の住宅街の住民のつながりを活性化できるのかとか,このような地域行事がどういう意味をもつのか…なんて話しておりました。

活動の場となった集会所には,下の写真にあるように,業務用のコンロや大鍋,外の倉庫にはたくさんのテント,簡易ポンプなどが用意されていました。例年の祭りではこれらを使っていろんな出し物をするのでしょうが,それによって地域の祭りは,災害など非常時におけるテント設営や炊き出しの訓練の機会になっているのです。

祭りを楽しみながら,災害時に備えた訓練をして,その中で,地域住民がお互いの顔を知り,信頼を醸成する。そしてその様子を子どもたちが一緒になって体験する。
大災害が私たちの日常生活と決して無関係とは言えなくなった昨今において,2年連続でやらない選択肢はないと決断された町内会のみなさんの真意がわかったような気がしました。

医療・福祉はもちろんのこと,心理においても地域支援の重要性が言われますが,このようなテーマは教科書で学ぶだけでは実感がわきません。大学から一歩外に出れば,そこには地域社会と人々の暮らしがあるのですから,実際に外に出てフィールドワークとして体験するのが一番です。

コロナ禍の中,不自由はありますが,このような地域とのつながりをこれからも大切にしたいなぁと思っています。

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うちのロボット

今日(7/9)は大雨のため,大学は急遽お休みに。
授業はほとんどオンラインでやっているので支障ないのですが,今日は4年生と実験の準備をする予定でした。コロナが収まってきたので,さあやるぞ!…となったところに大雨!というのは,昨年もこの学年のゼミで繰り返されたパターン。自然が相手とは言え,はぁ~~~。

学生たちが来られなくなったので,この週末に行われるオープンキャンパスの準備をしているのですが,今年もさわることのない非接触の展示だけに限定しようと思っているので,(比治山心理というか私のゼミの特色のひとつの)VR展示はできないなぁと…。これも,はぁ~~~。

というわけで,できた時間を使って,うちの隠れゼミ生(プログラムで作ったロボットです)をプログラムのコーナーに公開してみました。オープンキャンパスや大学祭で展示しているものです。

ソフトウェアロボット (https://maruhi.heteml.net/programs/softrobot/softrobot.html)

「まぁとにかく,かわいく作ったら絶対大丈夫じゃろ~」と言いながら,ゼミで(お金がないので)CGで作ったキャラクタを動かし始めたのが5~6年前でしょうか。しかし,ロボット工学では1970年代から知られる古典的テーマ「不気味の谷」との戦いがこんなに大変なものだとは思いませんでした。どう作ってみても,「死体が動いている」ようにしか見えないし,笑うと思わず「引く」不気味さ…「バイオハザード」じゃなくても楽しめる恐怖。ちなみに,VR実験でいきなり目の前に提示すると,被験者のみなさんは悲鳴をあげながら身をよじって飛び上がります (^^;)。

でも,このロボット作りを通して,身をもって人間のスゴさ!を知りました。相手が本物の人間かどうかを敏感に察知して見抜くすごい能力を私たちはもっているのです。表情に関しては,特に笑顔にキビシイ!…本当の笑顔かどうか,私たちは作られた表情の裏にある「心」に反応するのです。

ちなみにこのロボット,目が合ってもニコリともしないし視線の研究には向いているからVR環境下で提示する視線刺激として使ったり,最近は「ソーシャルディスタンス」のキーワードに乗ってパーソナルスペースの実験に使ったりしてきましたが,不気味さも慣れれば見られる程度になったので,まぁ話題性はありそうだし公開してみます(「ぜんぜんかわいいじゃん」なんて思うあなた,ぜひ,笑った顔←100%を見てあげてください ^^)。

本当は下の画面のマジ!ロボ!のプログラムを早めに公開したいのですが,こちらはOculusのVRがない人はまったく試すことができないし(しかも不気味の谷とは無縁のかわいくなさ←たぶん1年後のダウンロード数は100倍違うはず…),本格的な実験プログラムなのでもう少し学生がデータを取ってから公開します(これも人間のスゴさ!が体験できるんですよ ^^)。

 

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風船割りゲーム

Kinect v2センサを使った風船割りゲームを公開しました(希望された方には以前から配布していましたが…)。

私のゼミでは,子どもたちの放課後教室や高齢者施設でゲームコーナーを開いて,その中で楽しみながら,脳機能の評価やリハビリ・発達支援ができないかと,フィールドとなるご施設と連携して,ゲームを開発してきました。

Kinectのような身体をとらえることのできるセンサを使えば,身体を使って表現できるゲームが作れるし,その中で,視覚-運動協応や自動反応の抑制,視点取得のような脳機能の評価や訓練が可能になります(身体版ストループ課題として使えます)。

もし,手近にKinect v2がありましたら,ぜひお試しください。

風船割りゲーム(https://maruhi.heteml.net/programs/bodyimage2/bodyimage2.html)

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アバターを使ったVR実験プログラム

私のゼミの卒論では,最近VRを使った研究が人気なのですが,こんな心理実験もできるんです…という一例として,今年の卒論実験のプログラムをアップしてみました。

アバターを使ったVR実験プログラム

バーチャル・ユーチューバーのように,私たちは自分とは別の身体をあたかも自分であるかのように使って動かすことができます。そのとき,私たちの脳は身体の左右をどのように対応づけているのでしょうか?

私たちのこれまでの研究では,アバターと正面から向き合っているときには,鏡のように自分の右手と相手の左手が対応している方が動かしやすいのに,斜め前からになると,視点がまだ正面側なのに,脳は自動的に右手と右手,左手と左手というように,対応づけを自動的に切り替えることがわかっています。そこで,この実験では,もう少し難しいことをやらせてみたらどうだろうかと,「積み木遊び」をやってもらう実験を行いました(実験をやった結果としては,いろいろ反省点多く,まずはちょっと課題が難しすぎたね~というのが我々の正直な感想でした… ^^;。手の角度を調整する部分がどうも身体の左右といった粗大運動のコントロールとは違うメカニズムで行われているようですね。プログラムももう少しアーティファクトに影響されないように煮詰める必要があった…コロナが恨めしい)。

この実験プログラムでは,キーボードの「M」キー(Mirrorの「M」)で,その場で左右の対応づけを切り替えることができるので,身体性のデモンストレーションプログラムとしても使えます。Oculus(facebook)のVRゴーグルが必要なのですが,大学の実験室に転がっているようだったらぜひお試しください(Oculus Riftなんて,だいたい私のようなもの好きな教授がもっているはずです… ^^;)。

Society 5.0といわれる現代において,私たちは自分の身体を離れて活動できるようになってきました。そんな中で「身体性」に関する研究はいろいろと盛り上がってきています。たとえば,人工知能がどんなに発展したとしても,機械は身体をもたないので,私たちのような身体を使った認知はできません。そういう意味でも,身体性の研究は人間に残されたもっとも人間らしい部分の研究といえるかもしれません。脳梗塞などによる麻痺のリハビリなどの応用面でも今後注目です。

今年うちの院生がやっている研究も,大々的な論文にはしない予定なので,いずれ実験プログラムを公開しようと話しています。コロナ禍で対面での研究発表がなかなかできない中,地方の小さな大学の小さな心理学研究室としての学生の研究紹介です。

 

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50タップ競争

発達上の課題を抱えた子どもたちの中に,「手先が不器用な子どもたちが多い」という保育現場の声を受けて,手先の器用さを測れないかと学生たちと研究したことがあります。ちょうどMicrosoftのSurface Proのようなタッチ画面をもつタブレットPCが出て来ていたので,2本の指で画面を交互に叩くことで走るゲームプログラムを作りました。

「50タップ競争」といって,50回画面を叩くとゴールになるのですが,「前の指が画面から離れた後でないと,次のタッチが有効にならない」というルールで作られているので,がむしゃらにタッチしても前に進むことはできません。大学生でも意外と難しい…。

今でも現役で使っているプログラムなので,プログラムのコーナーの下の方にひっそりと公開させていただきました。

50タップ競争 (https://maruhi.heteml.net/programs/50taps/50taps.html)

マウスでは遊べないため(タッチ専用),ターゲットとなるPC環境が限られるのですが,Surface ProやNotebook,BookなどのタブレットPCをお持ちの方は使えるかもしれません。

よろしくお願いします。

 

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計算練習プログラム

大学生の中にも,簡単な四則演算に意外と時間がかかる人たちがいらっしゃいます。どんな特性をもっているのか調べてみると,子どものときの指計算を今も(心の中で)続けている人が多いのです。

普通の人は,九九のかけ算などは丸暗記によって自動化しているから,2桁×2桁などの暗算も簡単なものならできるのだけど,このような簡単な四則演算が自動化していない人は,それにワーキングメモリ(一時的な心的作業のために使う能動的な記憶システム)の処理容量が取られるので,SPIの非言語問題のような数学的な問題を解くときに苦労します。

今回,ちょうど計算能力と数概念獲得の研究をしている大学院生がいるので,以前子どもの計算練習用に作って使っていたプログラムを新しく作りなおしてみました。

少しだけゲームっぽい課題にして,プログラムのコーナーに掲載しています。

計算練習プログラム (https://maruhi.heteml.net/programs/keisan01/keisan01.html)

もし,使えるようであれば,どうぞダウンロードしてお使いください。記録を残せるので,九九で「7の段が苦手」というような特定の傾向を分析によって調べることができます。最終的には音声認識や文字認識で反応できるようにしたいのだけれど,まだいい方法が見つからないので,現状のままでの公開ですが…。

ちなみに,ホームページ上で動かしてみることのできるWeb版(体験版)もあります。

Unity WebGL Player: Keisan01 (https://maruhi.heteml.net/webprog/Keisan01_web/)


学生たちと一緒にやっていた子ども食堂や学習サポート活動も,残念ながら,コロナ禍のために1年以上にわたって中断している状態ですが,プログラムだけでも,ちょっとだけでも,世の中の役に立てれば幸いです。

 

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「人間と生命」の授業ページを非公開にしました

「人間と生命」という授業,昨年度はインターネット公開版として授業をしたのですが,今年はアツくやりたいので,受講生のみを対象に非公開で行うことにしました。

受講生には,今後,Classroomでパスワードと受講方法を案内します。

よろしくお願いします。

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コロナとの戦い

書きたくなった。ちょっとヤバいかもしれないけど,今の大学生のリアルな日常(吉田ゼミ編)。

かなり長い( ゴミかも…でもマジ…)。


10日,月曜日お昼すぎ,突然,学内放送が鳴った。

ゴールデンウイークの影響か,広島では新型コロナの新規感染者数が急増しており,それに伴う措置として,午後からの授業はすべて休講にするので学生は全員帰れとのこと。
また,翌日から来月1日まで3週間あまりを学生登校禁止期間とし,授業はすべて遠隔授業に移行するらしい。

うちの学科では月曜の午後に3・4年のゼミの授業がある。
連休前にゼミの新3年生が決定したので,この日の午後は合同ゼミを行って,4年生が卒論の研究構想を3年生に向けて発表する予定にしていたけど,それもやむなく中止。

またかぁ…。
昨年もコロナで一度も合同ゼミを行うことはできなかった。下の写真は一昨年のもの。

ゼミでは「縦」のつながりがとても大事なのに,それを作ろうとしてもいつも邪魔される。本当にコロナ…恨めしい。

でも,うすうすこんなことになる気もしていたので,日曜にGoogle Meetでゼミ生全員が参加する会議室を作っていたから,「じゃあ,今日はオンラインミーティングのテストでもしようか」ということになった。
でも,Meetの会議室を開いて4年生がちらほら入り始めても,3年生は遠慮して入って来ない…。

その時,4年生からLINEで「先生,これから大学に来ちゃダメですか?」

「は? そりゃ,当然ダメでしょうよ~! (>o<;)」

でも,就活先に出さなきゃならない成績証明書を今日中に取っとかなきゃなんていう理由も一応あるらしい。そこで学生に向けた大学からの指示メールをよく見たら,「今日は午後休講」,「明日から6/1までは学生登校禁止」とは書いてあるけど,今日が登校禁止とは…うん書いていないね…。

「じゃあ仕方ない,ちょっとだけおいで。」

また,別の学生からLINE…。明日から登校禁止なので,卒論の関係資料を完成させておきたいらしい。まだ学内にいるので,帰る前にどうしても実験室に立ち寄りたいとのこと。

「じゃあ,少しだけ…。」

その後また別の学生がやってきた。他の学生たちが帰る中,「隠れてました~」だって… (^^;)。


うちの大学では,コロナ感染者が一人でも出ると,その場で休講が決まって,学生たちを帰して,感染者から濃厚接触者を聞いて当該学生に連絡し,保健所の指導を受けて学内の消毒作業を行うのです。

学生たちが「やったぁ~! 授業なくなったわ~!」と大喜びしながら帰る中,うちのゼミ生たちはなぜか大学にやってくる。

「アストラムラインの駅,すごい学生ですよ。みんな帰ってるんですね~」なんて,のんきに電話しながら,まるで川の流れを遡る小魚のようにやってくるうちの学生たち…。

川を遡上する魚たちって,なぜ川を上るんでしょうね。川上に何があるのか見たこともないくせに…。上った先にあるのは「楽園」ではなくて,「危険」かもしれないのに…。

気がつけば,実験室にはオンラインで参加している学生と同じくらい学生が集まってしまった。大学から帰れと言われているのに…これはかなりいけませんね…危険。

そのうち,「俺も行きます! 20分で着きます!」なんて,オンライン会議室から消える学生がいたり…この付和雷同ぶり…この人たち,絶対,魚レベルだわ!

そうやって,もう誰もいないキャンパスに4年生たちが集まって,いつの間にかいつものようにゼミが始まった。

50キロ先から駆けつけるなんて言っている学生はさすがに全員・全力で止めて,実験室にいる学生がLINEや電話やメールで自宅にいる学生たちとやりとりしながら,資料を集めてまとめている。


なんか昨年もそうだったなぁ…って思い出しましたよ。

コロナで対面授業が全面停止になっている中,「土日なら交通機関も空いてるし,来てもよくないですかねぇ?」なんて言って,土日や夏休み中にこっそり集まって,実験の準備をしていたなぁ。

これ(魚レベル)は,うちのゼミのDNAかもしれん…。昨年の4年生の姿があなたたちにダブって見えるようになってきたよ…間違いないね。

でも,こんな時間は,私にとっては,とても大切なものでした。

コロナという圧倒的な負の力に支配されている今の世の中で,大学の小さな心理学研究室としてのアイデンティティをかけたレジスタンス。不自由でなかなかうまくいかないけど,本来私たちがやるべきことをやりたい。希望をなくして努力をしなくなったら,たぶんそれが負けを意味すると思うから,とにかく流れに逆らって,あがいて,もがいて,泳ぐ。

とりあえず,3年生たちに見せられるような資料もできたし,もう暗くなってきているので,「そろそろ帰らなきゃよ」,「でも,今帰ってたら,絶対守衛さんに怒られるよね」,「あぁ絶対間違いないよ」なんて言っていたとき,学生たちがロッカーに貼ってるコラージュ写真に昨年の4年生を見つけて,「あ,先輩たちの写真だ~」,「この先輩,なんて名前だったっけ」,「〇〇先輩よ」なんて言いはじめた。

昨年は,3年生の歓迎コンパも,4年生の追いコンも,ゼミ名物のクリスマス会も,何ひとつゼミのイベントはできなかった。それどころか,合同ゼミも一度も開けなかった。なのに,みんな先輩の名前を覚えてるんだね。
うちのゼミは実験をやるゼミなので,昨年,先輩の実験に被験者として参加したときに覚えたそうな。
「コロナ感染が怖いから,実験室では教示など必要なこと以外はしゃべらないように」と言っていたのに,結構おしゃべりしてたのね…キミたち。

卒業した学生たちはもうここにはいないのに,昨年の元気な学生たちが,この子たちの心の中にも宿っているような気がして,うれしかった。


「『命』って何でできていると思う?」

たまに学生にいじわるな質問をすることがある。細胞の活動でできているのかもしれない…。あるいは,魂が存在するのかもしれない…。正解なんてないですよね。

「命って『時間』でできているんじゃないかな?」…私なりの考え。

私自身もちょっとだけやっているけど,障害をもつ子どもたちや難病患者の人たちのためのソフトウェア(プログラム)を開発している仲間たちがいて,それを見て思ったのですよ。

「ソフトウェアって何でできている?」

普通は,どんなモノにも,必ず原材料がある。
でも,ソフトウェアは「情報」であって,本質的には形のないもの。質量さえ存在しない。

じゃぁ,ソフトウェアの材料って何かというと,それは人間がもっている「時間」だ。時間という抽象的な存在を,人は形にすることができる。その形は,物理的には存在していないのだけれど,人間にはそれが見えるんだ。絵が好きな人は,絵を描いて,人に見せるところを想像すればいい。

人生の一部である時間を原材料にして,人の役に立つものが作れるって,なにか素敵だよね…。だって,そうやって作ったものに価値があるってことは,その人の人生に価値があるってことだからね…なんて,格好つけて学生に話したりする。

私たちが研究対象としている「心」もまた,ソフトウェアと同じく形をもたない存在であって,限られた時間の上に成立する「命」によって支えられている。

そうか,わかった。キミたちは,今,この「時間」を求めて,ここに集まってきてるんだね。

「時間の価値がわかる人には,命の価値もわかるはず」…と思う。

コロナ禍は,私たちのゼミから地域のお年寄りや子どもたちとのつながりを奪ったけど,ちょっとしたリスクを負いながらも「今という時間を大切にしている」学生たちの姿を見て,これは人間が人間としての本質を廻って,本来の姿を取り戻すための復権をかけた戦いなのかもしれないと思うようになった。

今の彼らに残された時間はあと10か月,このような時代だからこそ,その時間を大切にしてやりたいと思う。


コロナ禍の中,若者の自殺が増えているという。

「死んではダメ!」と強く思う。なぜならば,せっかくもっている時間がなくなってしまうから。

時間があるなら,流されるのでなく,流れを頬に感じながら,川上を探して泳いでみてはどうでしょうね。

今の社会の水は,あまりにも濁り過ぎてしまった。

だから,大切なものが見えないだけかもしれません。

川上に向かえば,水も澄んでくるでしょう。

その時,人にしか見えない,大切なものが見えてくると思う。