Hollow face 錯視(hollow face illusion)
- お面(マスク)を裏側から見ると凹んだ顔が見えるはずですが,片眼で見るなど,奥行き手がかりが十分でないと,我々にはその表面が凹んでいるようには知覚されないという錯視(hollow face 錯視)が知られています。
- 図1はマスクの表側と裏側を単眼イメージとして描き出したものです(光源は手前左上方に置いています)。表側(図1-A)は(当たり前ですが)出っ張った表面が知覚されます。それに対して,裏側(図1-B)は…あら,これも出っ張っているように見えてしまいますね(本当の出っ張った表側は左側にわずかに見えている部分だけです)。
- 下にリンクをはっているAVIファイルは,このマスクをくるくると回して見るアニメーションです。回転運動は対象の3次元構造についての情報をもたらしますので(運動による奥行き形状の知覚,structure from motion),裏から見た顔が実際に凹んでいることがわかるかと思います。
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(A) Normal Face
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(B) Hollow Face
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図1.Hollow face 錯視
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観察のポイント
- 回転運動のムービーをいろいろな場所で止めたり動かしたりして,顔表面がどのように見えるかを確かめてください。
- ムービーファイルのうち,テクスチャ(&ハイライト)をつけたものの方が,裏から見た顔が凹んでいることがわかりやすいかもしれません。
- 場合によっては,裏から見た顔が現れる時に「明暗が反転した顔が逆向きに回転している」ように見えることがあります。その場合,hollow face 錯視が運動による奥行き手がかりよりも優位に働いている(つまり,回転していても凹んで見えていない)ことを示します。
- 先にデモを掲載した「陰影による奥行き形状の知覚」では,我々の脳が「上方光源」を仮定することによって,陰影パターンから凹凸の形状を知覚させていることを示しましたが,裏から見た顔が凹んで見えず,「下方から照明された凸状の表面」として見えるのはなぜなのか考えてみましょう。
AVIファイルのダウンロード
雑記
- 図2に示した写真は,よしだが学生時代に飲み屋のおねえさんに教えてもらった,ちょっとしたいたずらです(ご存じの方も多いでしょう)。ちょうど,Thompson(1980)の「サッチャー錯視(Thatcher illusion)」が話題になっていたころでしたので,それに対抗して,「漱石錯視(Soseki illusion)」と勝手に名づけて,あちらこちらで人に見せたりしていました。
- 対象を見る方向が変わると,我々の眼の網膜に映る対象の2次元投影像の形状は変化します。しかし,我々は通常,対象の形状そのものが変化したようには見えません(形の恒常性)。なのに,どうでしょう。図のように千円札を折り曲げて前後に傾けて見ると,漱石さんの表情は目まぐるしく変化します。
- 最近,よしだは,顔認識の情報処理過程の初期段階で顔パターンの情報がどのように処理されているかを研究しているのですが,顔刺激に対しては,顔の3次元構造についての情報よりも,2次元的な画像特徴が多く用いられているようなのです。
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(A) Happy Face?
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(B) Sad Face?
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図2.Soseki 錯視
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付記
- このデモは,平成10年度〜平成11年度科学研究費補助金研究(基盤研究(C)-(2),研究代表者:吉田弘司,課題名:「顔認識処理の初期過程に関する研究」,課題番号:10610091)の一部です。また,AVIファイルは,日本基礎心理学会第18回大会(1999年10月,於聖心女子大学)のAVプレゼンテーション(吉田弘司・永山ルツ子 「Hollow Face錯視における顔テクスチャおよび光源位置の効果」)で使用したものの一部を縮小したものです。
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